新しい隠れ家

納車の日の帰り、日のとっぷりと暮れた国道を家に向かってまだまだぎこちなくエスを走らせました。

幌を上げた室内。フロントウインドの小ささ。何もかもジャストサイズでした。

視界の悪さは確かにあるのですが、ほとんど気になりませんでした。(かえって現代の車の傾斜のきついAピラーの斜め前の視界を妨げることといったら危険でしかたが無いと思えるほどです。)

信号待ちで停まり、ふと気がつくと周りのクルマが皆こちらを見ています。恥ずかしさというか、優越感というか、このワクワク感はずっと変わりません。隣に停まった大型トラックのタイヤの中心ぐらいのアイポイントも新鮮でした。

この日のために見つけてあった駐車場(青空)に、辺りに気を使いながら空ぶかしも控えめに入庫。この駐車場は、車庫証明の取れるぎりぎりの距離に自宅からありました。

エンジンを切った後に訪れた静けさ。少し火照った体と、ミッションハウジングの温もり。変わらぬオイル香を嗅ぎながら、しばらく放心状態だったのを覚えています。

青空駐車のために、誂えたボディカバーをかけてやり、更に普通車用の薄いボディカバーを。「なんか心配だなぁ、大丈夫かなぁ。」このときすでに、エスは自分にとって特別なクルマになっていたのかもしれません。

                             続く