曇り空の午後

ブオー!!! あれ、あれぇ???

なんと、まっすぐに走ることができません!!!大型トラックがつけた国道の轍にハンドルを取られてフラフラです。先ほどまで乗っていたAE86の直進付近でのステアリングの曖昧さなどは微塵もありません。

「大変なクルマを買っちゃったかな」正直、そう思いました。だって、AE86とはコンセプトが全然違っているのですから。

10分も走ったでしょうか、少し余裕みたいなものも出てきましたが、それでもステアリングのシビアさは全くの異次元のようです。しだいにそれを楽しんでいる自分がいました。

「クォォォォーー」後ろから聞こえる高周波サウンド、カチカチと決まるシフト、ダイレクトなステアリング、低いシート、そして、ずっと憧れていたオープンカー!それには僕の求めていたものが、全てつまっていました。

現代の、快適なクルマに慣れた若造を、すこし敷居を高くして迎え入れた小さなスポーツカー。「アタシを手なずけられるものならやってみなさいよ」 そう言っているような気がしました。

試乗を終えてショップに戻ると、社長さんとメカニックの方が揃って迎えてくれました。二人ともニコニコしています。きっと、エスから降りた僕の高潮した顔を見て、「はじめてエスに乗ったヤツって、皆こんな顔するんだよなぁ」なんて思われていたのかもしれません。

キーを抜き、社長さんに渡そうとすると、「もう、君のクルマだから」 思わずふりかえってみたエス。彼女は「ふん!」と言ったのか、それともウインクのひとつでもしてくれたのか。

                              続く